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今年一番の映画になるか「おくりびと」

コミカルな笑いあり、身につまされる涙ありの映画で観客と共に同じ場面で笑いつづけ、泣きつづけた。
そのためか次の日から2日間耳鳴りが止まらず、悪魔の唸り声のような、水道管に響き渡るような音が反響した。
そのあとは音がよく聞こえるようになり、自転車に乗った身も軽くなり、人をすいすいと追い抜いた。
よい映画は、体調を改善する。


失職したチェロ奏者の大悟(本木雅弘・通称もっくん)が、山形に帰郷して、最初は乗り気でなかった納棺師(のうかんし)の仕事を、妻には内緒でやり始める。
見事な手さばきで亡くなった人の衣服を肌を見せずに、死に装束に着変えさせ、顔の表情を指で丁寧に整え化粧をほどこす。


名脇役の笹野高史は銭湯の湯を沸かす仕事を手伝っているが、焼き場のガス室に勤務している。
今まさにお棺に火をつけるスイッチの番人の笹野高史がガス室を死への入り口の門であると言っていた。


笹野高史が死の門について話す場面で、私は自分の思いの底へと落ちて行った。
ヨーロッパのある街で、私の前を歩いている知人が車にぶつかり、はずみでわたしも引っ張られ雪の道路にたたきつけられたことがあった。
それからの時間はスローモーションで流れ、本当に白い大きな門が私の眼前にしばらく見えていた。
子供や中性の天使が門の周りにいた。
耳にはリルケのマルテの手記のかの有名な「一行の詩を書くにはあまたの・・・・」の文章が聞こえ、日本語でまる一日リピートしつづけた。
映画と言うのは眠っている思いをふと思い出すきっかけとなるわけだ。






暇を見ては、丘や野原でチェロを奏でて人間の高貴な魂を深めている大悟であるが幼いころ店と母と大悟を捨てて女性と逃げた父を許すことができない。
その父親から大悟は、石文(いしぶみ)と言うのを教えてもらった。
自分の心を表す石を河原で拾って相手に渡すと言う手紙なのだが、幼いころ父と子で石文をかわしあっている。
大悟はチェロをおさめるカバンの中に父親からもらった石を入れている。
父親は大悟からもらった白い丸い石を握りしめているのを、亡くなって寝かせられている時に、納棺師の息子によって、手の中に発見される。


妻の美香役の広末涼子がすずやかで雪国にぴったりでよかった。
子供をおいて男と逃げた余貴美子が見せてくれる引き裂かれた心はひたむきで説得力があった。


人が亡くなろうとどうしょうとおなかはすくわけで、納棺の仕事がすんだ会社では、皆で鶏の空揚げにむしゃぶりつき、骨を積み上げる。
社長は2階で魚の白子(小動物の陰のうだったかもしれない)を食する。
動物的な食欲を隠さない人間たち。
社長役の山崎努が何度も繰り返して言う「これが困ったことに旨いんだな」にはなるほどと思った。
社長はどんなことが起こっても「だいじょぶ だいじょぶ だいじょぶ」と唱え続ける。
一家に一人欲しい。
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Gajamila

 先日、「西の魔女が死んだ」の予告で見て、面白そうな映画だと思いました。
 本木雅弘には不思議な存在感がありますよね。多くの監督が使いたがるのを見ると、彼は透明人間なのかもしれません。
 山崎努(「つとむ」はこの漢字だったと思います)は映画のおいしいところを持っていってしまうって感じですかね。

 Gajamila日記、引越しした上で再開しましたので、もしよかったら覗いてみて下さい。お元気で。
by Gajamila (2008-09-20 16:45) 

星笛館主

Gajamilaさんお元気で何よりです。ここでお会いできるとは!
社長の山崎努が食していた旨いものは、魚の白子か小動物の陰のうだった気がしたので、名前と一緒に書きかえました。
本木雅弘はいいあんばいで魅力的です。
題名は度忘れしましたが彼が若いころ出演した映画で、弱い相撲部の部員になった役のもよし、悲しさや蔭りを宿している人物になるのもよしでした。
確かに、見た映画の他のことは忘れても、何年たっても彼の役の人物が忘れられないほどの存在感が本木雅弘にはあります。
by 星笛館主 (2008-09-20 19:18) 

星笛館主

本木が出た映画は「シコふんじゃった」1992年でした。
シリアスものもやるけど「シコ・・・」の時は、オモシロ系で出ていた竹中直人と柄本明のことは、影が薄くなって忘れていました。
本木は、架空の役を演じると言うよりも、地球上に本当に存在する人間Xになってしまうのでしょうか
by 星笛館主 (2008-09-27 10:50) 

Gajamila

「シコふんじゃった」、私も当時試写会で、見ました。大規模な試写会で、観客席が笑いの渦でした。本木も透き通るように若く、整った顔立ちとはおよそ似つかわしくない演技にキャスティングのうまさを感じました。

 「ファンシー・ダンス」もお薦めです。お寺の修行僧の話ですが、「シコ—」と同じ周防正行監督の作品です。私は「シコ—」より好きな映画です。禅問答なども出てきてけっこう楽しめます。

 そういえば、同じ周防監督の「シャルウィ・ダンス?」には、本木は出てきませんでしたよね。その代わりが役所弘司が起用されたのかな?

 苦節10年?周防監督の裁判劇、まだ見ていないのですが、よく出来た作品だという噂を聞きました。mariさんはご覧になったのかな?
by Gajamila (2008-09-29 05:44) 

星笛館主

漫画の「ファンシィ—ダンス」(岡野玲子)は好きで読んでいましたが、映画は見逃していますので、DVDが出ていたら見ます。
「それでも僕はやっていない」はよほど元気な時でないと耐えられないので、ずーっと横目でチラシやポスターを見ているだけで見逃しています。
この映画を見ていないと真面目な談義に加われないのでいつか見るつもりにしていますが。
by 星笛館主 (2008-09-30 00:28) 

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