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詩「花咲ける詐欺師たち」 狩野敏也  詩集「わが裏博物誌より」 [詩]

詩「花咲ける詐欺師たち」狩野敏也 (土曜美術社出版販売) 

あなたたちは  よもや知るまい
花たちの誘惑術や秘術を尽くす詐欺の技を


種子植物は確実に受粉し
安定して子孫を残せるように
さまざまな工夫を凝らす
豪州の蘭「ハンマー・オーキッド」が好例
雌蜂に偽装するのだ
その唇状の花弁の匂いと感触に誘われ
雄蜂がその花冠にある唇弁に抱きつく
するとその根元のバネ仕掛けが働き
雄蜂を反対側にある花粉塊にぶつけるのだ


欧州の「オフリス」はもっと賢い
雌蜂にそっくりの花をつけて
雄蜂をおびき寄せて偽の交尾をする
が 満足まではさせない
雄蜂は興奮状態を持続させたまま
次の花を訪問し他花受粉が行われるのだ
本物の雌蜂が怒らないかって?
彼女たちがまだ発情しない時期に
すばやく済ませるのさ


ところがあべこべに虫のほうが
花の真似をする手合がいて困る
自分を蘭に見せかけ獲物を取る虫だ
東南アジアの熱帯雨林に棲む
肉食で 体長八センチほどの「花かまきり」がそれ
その名のように蘭の花のそっくりさん
蘭だと見間違えて来た昆虫を捕らえるのだ
カマキリ目ヒメカマキリ科
昆虫図鑑を見てもまさか虫とは誰も思わぬ


さて あなたたちは不思議に思うだろう
蟻とともに昆虫界きっての知性派の蜂が
蘭の花ごときに
それも蜜の御馳走用意もない蘭の花に
なぜ ころりと騙されてしまうのかと・・・・・・
珍種の蘭なので学習の機会に乏しいからか
春先のまだ学習の不十分な蜂を
利用しているためなのか
ヒトの学会でも諸説紛々なのだ


そういう君は誰かって?
攫(さら)われるのが怖いから
匿名にさせて貰うが
三十五センチもある長い管の奥に
蜜を貯めこんでいるある種の蘭だ
長い口吻を持つ雀蛾だけを
専属の受粉係にしているのだ
採りに来ようと
言っても無理だよ
マダガスカル島の某所にしかないのだから


★狩野敏也さんの詩は誰にも真似できない奇想天外で重厚でひょうきんな面白さがある。
詩集「四百年の鍋」「二千二百年の微笑」「鶏たちの誤算」「もう翔ぶまいぞ」などいつも見えるところに並べて再読させていただいている。
詩集「花咲ける詐欺師たち」の帯には「虚、実を揶揄(からか)い実、虚を嗤う 虚と実のこの鬩(せめ)ぎあいを見よ」とある。なんだかぞくぞくする。


ハンマー・オーキッド.jpg
豪州の蘭 ハンマー・オーキッド

オフリス.jpg
欧州の蘭 オフリス

アングラエクム・セスクイぺダレ.jpg
匿名の蘭=アングラエクム・セスクイぺダレ 花弁の一部が袋状に突出した筒状の蜜腺(距・きょ)を持つ。


<最近見た劇場映画>

1)「われらが背きし者」
イギリスの生真面目な大学教授とロシアンマフィアの友情。家族を巻き込んだモロッコ脱出を計画。

2)「永い言い訳」
小説家の夫は、妻とその親友がバス事故にあって亡くなった時刻、別の女性と密会していた。
小説家は、妻の親友の子供(兄妹)の面倒を見るようになる。



★柴犬カンチの足跡日記
http://blog.livedoor.jp/kanchi_m/

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