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ちょっと異質な、はじめてのゾンビ詩 勝嶋啓太詩集「今夜はいつもより星が多いみたいだ」より、「食慾と性慾」 [詩]

詩「食慾と性慾」 勝嶋啓太 (コールサック社)




ずっと好きだった女の子がいたのだが
ぼくは とっても 臆病者なので フラれるのが怖くて
好きです って言えないでいたら
彼女は やがて ぼくの友人と付き合いはじめ
ふたりは 結婚してしまった
ふたりの幸せそうな顔を見るとムカつくので
仮病を使って 結婚式には出なかったのだが
ぼくの気持ちを知らないふたりは
しきりに 家に遊びにおいでよ と誘ってくれる
仕方がないので 結婚祝いのプレゼントを持って
ふたりの新居を訪ねると

ぞんび1.jpg
彼女が ゾンビに なっていた


ぼくが訪ねた時には
友人は あらかた喰われてしまって 骨だけになっていたので
プレゼントを置いて さっさと帰ることにしたのだが
ゾンビというのは ひどく腹が空くものらしく
気がつくと 10メートルぐらい後ろを
彼女が ひもじそうな顔をして
ぼくの様子を窺いながら ずっとついてきている
ぼくが立ち止まって振り返ると
彼女は 怯えたように ビクッとして
オアズケを食らった犬のような情けない顔で
ぼくをじっと見て ヨダレを垂らした
その時 ぼくは 彼女を 抱きしめたいと思った


現在
彼女は 大分腐りかけてきているんだけど
ぼくの部屋の隅で
相変わらず ひもじそうな顔をして
じっと ぼくの様子を窺っている
彼女には ぼくは よっぽど美味しそうに見えるらしく
しょっちゅう ヨダレをダラダラと流している


今日
意を決して 抱きつこうとしたら
右足を 喰われた
多分 近い将来
ぼくも 友人のように あらかた喰われちまうんだろうけど
久しぶりに満腹になって
今 すやすやと 穏やかに寝息を立てている
腐りかけの彼女を見ていると
まあ それでもいいか
と思えてくるのである






★なぜか宇宙次元のファンタジー詩や聡明な生活詩を書く知性的な女性詩人たちから「面白いね」と言われ人気がある詩人の詩。
この「面白いね」はフランス料理や日本料理の通の人が、異次元の調味料を加えた 「たこ焼き」  否!「おいしい家庭料理」を食べた時の感想のように聞こえてしょうがない。
たいくつな  否!賢明な生活詩ばかりを書く良い人詩人が、人間の影の部分を書く詩人を陰でいたぶり、いじめるということは起こり得る。
実体験として枚挙にいとまがないくらいだ。
たとえは的確ではないかもしれないがその昔、映画の悪人役の役者が巷の人々から石を投げられたという話はよく聞く。
その点、勝嶋啓太氏の詩集と身柄はあたり口の可憐さ、情感の深さから安全だろうと思われる。
物語に光と影が必要不可欠な映画のたとえだとわかりやすい。
物語は、善悪と喜怒哀楽が絡み合って作られていると深みと陰影が出て滋味あふれるものになる。
イメージ写真・文 <ブログ主>





柴犬カンチの足跡日記
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