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わたくしごと(近況報告)

死に際の父の肉体に起こる
交互に繰り返される焦熱と冷却の苦しみに巻き込まれ
「死にたい」「殺してくれ」の断末魔の声をねじ込まれ
父の痛みを朦朧とさせ死への意識を麻痺させるモルヒネを
医師看護婦に乞いに走り回る直談判の鬼となり
間の抜けた医師の説教と意地の悪い看護婦の執拗な殴打と
何に対してもあっけらかんとした母の無関心に耐え
私自身
すべての肉体器官が無に帰してしまう死を実感することとなった


それぞれの個体の現在の時間に入り込み
相手をしてなだめてそっと抜け出し
現在にいながらにして過去に息づき
未来の自分が、嬰児である過去の父を抱いたりした


予定調和を愛する短気な世間から
「元気がないわねえ」などと元気づけられ
現状を明かしたことに臍を噛んだ



4月半ばから喘息のような咳に悩まされ熱の中で目を覚まし
全身のだるさの中で死人たちと出会った
日中は、四分の三拍子、四分の四拍子、二分の二拍子の曲のカウントの後に咳きこんで
薔薇の花の燃える微熱の炎の瞑想曲中をさまよった
サラダの中の長い髪の毛の向こうに並ぶ娘とその祖先たち
どこで入ったのか湯呑の中の虫の羽が虫たちを何千と呼んでいる
皿の破片の入ったチャーハンや作り置きのしぼんだハンバーグの奥に
顔の見えない悪意が隠れている
廊下につながった橋の欄干に群がる手
おじさんの首に三つある赤イボや
同じものが繰り返し描かれている紙袋文字に不快を覚えた





鬱は抑圧された怒りだそうだが
ものの本によると
その原因を見せてくれる熱は
魂を悪魔から守っているそうだ




JRの冷房が全身を凍りつかせ疾走
冷雨の中、父の全身の骨を入れた骨壷1つと、喉仏の骨壷1つ
傘とお布施の入ったかばんをよいしょと抱え
重さと悲しみと戦って3日後
ついに無気力となり踵から階段を降りて右足を捻挫した