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雪の朝の岸辺のカワセミ(494) [エッセイ風]

風がやんで、速度を落とし粉雪がまっすぐに落ちてくる岸辺に、くちばしの黒いすばしこい、いつものオスのカワセミがちょこんといた。
どこからあの羽のブルーがにじみ出てくるのか、声さえ立てられないくらい神秘的だ。
流れの緩やかな場所で魚を狙って川にナイフのように滑り込み、すぐに川面に浮かんで岸にもどった時、水の上に、円形とそこから出てきた線の波紋の軌跡ができた。
命をかけた孤独な仕事をしているのに、打ち枯らしたカラスのような悲壮感はなく、けなげでかわいい。
そのうちに流れに乗って、鴨が4羽、白鷺が1羽カワセミのいる岸のそばにやって来た。
鴨はバシャバシャと浅瀬の水をかき分け、つられた白鷺も心なしか水を蹴立てている。
するとカワセミもそこに混ざって、皆のまん中へ逆さに飛び込んだのだった。
エネルギー交感のようなこんなこともあるのだ。
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アメリカ映画「ぼくが結婚を決めたわけ」 2010 [映画]

この映画がなぜ東宝封切りの7本の中に入っているのか不思議だが、味噌汁の具が、豆腐かと思えば、山芋のようでもある、しかしよくよく噛んでみれば金箔入りの麩だったというような面白さがあった。
題名と内容がつながらない映画なので、題名につられて入って来た人は、首をかしげながら帰途につくだろう。
集客数もよく、題名の答えは見つけ出せないものの、誰も怒らずにんまり、ほんわかしているのだ。
間の抜けたぼわぼわっとした映画も、親友の危機を打開しょうとして陰で奮闘してそうなったのであれば、捨てたものではない。

のっぽの実業家と背の小さい車のエンジンの開発をしている男性2人の友情をコメディタッチで描いている。
2人とも中年男で風采が上がらず、相手の欠点を補いあいながら、コンビで仕事をしている。
親友の妻の浮気を、結婚まじかの実業家が見てしまう。
実業家は親友の妻とは、学生の頃付き合っていたらしい。
この1件を親友に隠していたために、あとで殴られることになる。
親友の妻の浮気の相手の家に談判に行った実業家は、その相手にまたひどく殴られる。
殴ることでだいたいの問題は解決する単純さだ。
大勢のマニアックな車好きのために、車のエンジンはわざと昔風の大音響にしてあり、好評で仕事を認められる。
球技に詳しくないので、棒を持って球を相手の陣地に入れる団体競技を何と呼ぶのか知らないが、エンジンの開発をしている男が、3回目の球をフリーで入れようとする時に、応援していた実業家が「もうすでに球が陣地に入ったのだと思え!」と未来の成功を、今のこととして把握するように命令する。
未来を先取りして、すでに成功したと断定するやり方は面白かった。

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つかりたい音(492) [エッセイ風]

音楽器では、一定の息の圧力で音を作って行かなければならない。
確かに一番下の音2つ、一番上の音2つは出にくく、下のラをめざしているのに全く聞きなれない、牛ガエルが狭い缶の中でいびきをかいているように聞こえる場合がしばしば。
一番高いファの音は、瀕死の白鳥めいて、かすれてかすかに悲鳴を出すだけの事がある。
地獄も極楽も体験した感情力を修め、一定の安定した精神力と息の圧力を持っていることは要だが、一番良い角度を常に見つける必要があるし、唾液の流出などもってのほかである。
自分が出したい音を鳴らし、それを確かめつつより正確な状態に持って行き、その中から抜け出せないくらい十分にひたって見ることが必要となる。
ラの指使いをしているからラの音が鳴ってくれていると思って、さっさと切り上げるような、他人行儀であってはだめだ。
下のパートになった時に、上のパートをよりよく支え、一瞬のうちに相手と調和し、時には躍り出るような様子も見せられるようにする修練が必要である。
4小節目にたいてい4拍のばす音が出てくる曲で、3拍しか伸ばさない人がいれば、相手を想定できない想像力の持ち主で、せっかちで思いやりのない人に見える。
自分を保ち、相手に合わせ、ささえながら支えられているなんて、まるで人生そのものである。

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回らない日 [エッセイ風]

遅すぎた新年会で、14階の展望台さながらの360度見渡せるレストランで15人ばかりが弧を描いて座った。
レストランができた当時は、展望台の部屋は、静かに回っていて360度の景色を見ることができたたらしい。
今はどうして回らないのか聞いてみると、経費削減のためであるという。
回り始める日は来るのだろうか。
食事をしている反対側は、がらんと空いてひんやりしていて、時代がかった芝居小屋の物置のようだった。
素面の呂律も回らず、酔いは回らず、景気づけのためにそこここに言葉の花火を明るく打ち上げてみた。
たまにヒットがあるので、今最高に気になっている楽しいことをせめてものにぎわいと、全員に話してもらった。
お葬式の時に配る画集、通っている運動クラブ、教訓めいた今年の抱負の話のある中で、畑に植えたかぼちゃの苗の巨大な蔓についたかぼちゃの黄色い花の話が臨場感があって一番華やかでよかった。
両手をぱっと開いて黄色い花を作り、天井にも100個もある黄色い花を次々に咲かせた。
回らない日は、せめて日ごろ鍛えた話術を駆使して、話の花でも咲かせよう。
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思い出せた宮沢賢治 澁澤龍彦までも [エッセイ風]

結核の体を酷使してまで他人に尽くすのは、自殺行為であり、そのことを35~36歳の賢治は気付き始めていた。
賢治のように鉄砲玉のように、人のために飛び出して行けない自分の傲慢さが身を打つようになった。
花巻に行かなくなって朗読や賢治作曲の曲を吹奏しなくなってから、かれこれ10年余りがたつ。
時折、種山ケ原が気流に乗ってやってくるし、イギリス海岸のくるみの化石が記憶の空に浮かんでいたり、鹿踊りの部隊やドングリたちが競ってやってくることもある。
今は雪ばんごや雪狼が「空のずうっと遠くのすきとおったつめたいとこで、まばゆい白い火を、どしどしおたきなさいます (賢治 水仙月の4日)」のお日さまの下に現れる。
賢治の心象風景である。
この世界に行かせてもらうと、戻って来た時に生きてゆく純度と硬度に変化があり、強く柔軟になっている。
昨日カイエ(lapis)さんのブログに行きつき、その聡明な鑑賞眼や吟味選択された事柄の、群を抜く美しさと豊かさに驚愕した。
カイエさんのカワセミと宮沢賢治のカ所を読んで、添わせている言葉のやさしさに触れることができ、こちらにも無理なく蘇らせられるものがあり、ただ事ではない力量を感じた。
「やまなし」の中に出てくるカワセミと3匹の蟹の親子は、痛切に死と隣り合わせに生きている。
蟹の父親が「魚かい。魚は恐い所に行った」と言うと蟹の子供は「こわいよ、お父さん」と言う。
そこには、その場逃れの薄められた慰めの言葉はない。
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怒れなかった日(489) [エッセイ風]

昨夜から焦げ目のついたもちもちしたナン(インドのパン)が目の前にちらついていたので、目的地に到着して、早速、昼ご飯にナンで腹ごしらをしようとしたところ、注文の時に、全部ナンにして下さいと言ったのに、中くらいのナンしか出てこず、ご飯が付いてきたので、ご飯はいらなかったのにとボーイさんに言うと「ハア」と言うので、ご飯の代わりに大きなナンが欲しかったのにと言うと、こちらの身にはなってもらえず、食事の時に怒って食べ物をまずくしたくないので、それでもプロかバカと言いたいのをぐっと我慢して、もうそれでいいと言ってしまい、目鼻がどこについているかわからないたいくつげなボーイさんを視界から消し、中くらいのナンを、大きなナンを食べる時の早さで食べ、よく見ると鶏のから揚げもあったので食べ、お百姓さんごめんなさい、まるく盛り上げられたご飯を見るとこの店から早く出たくなったので、さっさとお金を払って出たのだが、御ナン(難)でした。



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映画「愛する人」アメリカ  ロドリゴ・ガルシア監督 [映画]

養子縁組を取り扱っている教会に出入りする人々や、その人たちの家族に出会った人々が、本音で複雑に絡み合い、ゆっくりと進む場面に観客とて人生を重ね、登場人物たちの気持を汲み取ろうとする姿勢や気分が生まれてくる。
その気分は、僭越ながら「ぼくのことを思想者とか、月下推敲ふうとか、仕事に熱心な奴とか思っている人がいるとしたら、それは誤解です。ぼくの一番の歯車、それは気分です。」(松岡正剛著 危ない言葉 セイゴオ語録1)の気分の使い方と同じと言わせてもらってもいいと思う。

14歳の両親から産まれ、すぐに養子に出されたエリザベス(ナオミ・ワッツ)は、長じて弁護士になり、アフリカ系アメリカ人の上司の子供を身籠り、自分の母親を必要だと思うようになり会いたくなって、教会に母親宛の手紙を預けたまま1人で出産し、亡くなってしまう。
聡明で美しく、決断力のあるエリザベスは、自由奔放に男性たちと付き合ってきているが、どこかしら孤独ではかなげである。
エリザベスを生んだ母カレンは、母親の反対でエリザベスを手放したことを後悔し、母を看取った後、エリザベスの消息を教会に尋ね手紙を預ける。
母と子が望めばその手紙は読むことができるようになっているが母子は37年間1度も会うことはなかった。
予定調和の親子のハッピーものではなく、劇的な場面で急激に泣きたくなるわけではないが、ずーっと悲しく穏やかな涙が切れることはなかった。
子供のできないアフリカ系アメリカ人のルーシー夫婦は、教会を通して赤ん坊をもらう約束をしており、赤ん坊の母親である女性とも妊娠中に会っていたが、産まれた途端に手放すことを拒否されてしまう。
めぐりめぐってエリザベスが産んだ赤ん坊がルーシーの所にやってくる。
エリザベスの母親のカレンは、ルーシーの家のすぐ近くに住んでおり、エリザベスが産んで、ルーシーが育てている孫に毎日会うことができるようになった。
不思議なめぐり合わせである。
時を重ね、時間と記憶の底を流れている悲しみに気づかされ、死に別れてさえも、もう一度関係を捉え直そうとする気分を取り戻せるものだった。








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「完全なる報復」 公開2011年 アメリカ サスペンス映画(487) [映画]

暗殺の特殊要員だった男クライドは、妻と娘の3人で穏やかに暮らしていたが、突然2人の暴漢に襲われ、妻と娘が目の前で殺されてしまう。
クライドは妻と幼い娘が殺されてゆく一部始終をま近で見なくてはならなかった。
しばらくの間、耐えがたい彼の苦悶の表情が映し出される。
暴漢の刑を軽くする方に力を貸した者たちすべてが、暴漢と同じ位置に立っているように見えてくる。
もしくはその立場を許しているように思えてくる。
見て見ぬふりをして放っておくのは同罪なのだ。

2人の暴漢は証拠不十分だったが、1人は数年の禁固刑、もう1人は10年後死刑になる。
禁固刑になった男は、フィラデルフィア随一の敏腕刑事ニックの有罪率を上げるために、司法取引を持ちかけられた結果、罪が軽減されて釈放されたのである。
敏腕刑事ニックにも妻と娘がいたが、妻と娘を殺されたクライドの気持を察して人間的な言葉をかけたりはせず、事務的に取り扱う。
暗殺の特殊要員だったクライドの悲しみと怒りはおさまらず、合衆国の独立宣言が行われたフィラデルフィアで、とほうもない復讐計画を10年かけて練り上げ成功させる。
「報復しても亡くなった人は喜ばないよ」と言ういつもの世間一般のあきらめに似た説得は彼には通じない。
留置場に出入りする人間の制服や、近代兵器、薬物をそろえているクライドの持ち工場の地下から、留置場にトンネルを掘り、クライドが恨みを持つ暴漢や自分の有罪率を上げるために暴漢と取引をしたニックやその部下や司法関係者たちを次々に殺してゆく。

10年後に死刑になった暴漢は、安楽死で死ねるはずだったが、クライドによって注射液の中に薬物を混入され、苦しみあがきながら息絶える。
釈放された暴漢は、時間をかけて恐怖を味わいながら手足を切り落とされ切刻まれる。
その場面を録画し、敏腕刑事ニックの幼い娘と妻に送りつけ、彼女たちはそれを見てショックを受ける。
クライドは、自分と同じことを敏腕刑事ニックにも味あわせるつもりなだが、そうまで徹底した映画ではなかったのでニックの妻子は殺されずに助かっている。
暴漢に襲われ妻子を奪われた人間の無念さや怒りを敏腕刑事ニックに知らせたかった、司法にも生かしてほしかったということだろう。


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無垢の結晶の一日 ・ M・A.・アトゥリアス グアテマラ伝説集より「火山の伝説」)岩波文庫 [本]

幻想詩人の西野りーあさんのブログで、普通の感覚では捉えられないグアテマラの魔術的な散文詩の一部を知ることができた。
一部を読んだだけだが、1音に終始の全てを込める日本の音にも似て、時を超えてめまいを覚えるほど美しい。
明日、魔術的リアリズムの散文詩を買いに走ろう。
全く知らなかった詩人の散文詩だが、ノーベル賞作家だそうだ。
芸術作品の異世界に行って戻ってくると、現実の世界の感覚が変化し、より力強く、繊細になっているのが分かる。


「ある世紀に、幾世紀も続いた一日があった」・・・を生きた男がいた。
「終始真昼である1日、夕暮れも曙もなく澄みわたった、無垢の結晶の一日」
・・・そのような濃い一日を生きてみたい。
1音成仏より、スケールが大きく深いような気がする。


(M・A.・アトゥリアス グアテマラ伝説集より「火山の伝説」)岩波文庫




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人数の拡張と収縮の個人的見解 [エッセイ風]

人数が増加すると、エネルギッシュだけれども、関心事が分散して、それぞれの交流が手薄になる。

人数が減ると、その原因によって、少人数のより集まりの雰囲気がおおよそ2つに別れる。
原因が反目しあったことにあると、その根の毒素はずっとくすぶっており、何年か後にガスが噴き出すことがあるが、ほとんどの人は気付かない。
また原因が人為ではどうしょうもなかったことにあると、そのことが解消された後に、再び人数が増加し始める。
人数を保持するためには、その過程を面白いと思い笑え、活き活きとしたものが生まれる感動がどこかで維持されていなければならない。
そしてそう思うことさえ忘れ去られていなければならない。


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