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怪物映画の私的効果 [エッセイ風]

秋の夜長に、月の光に照らされてできた自分の影に出くわし、驚くことはもちろんのこと、恐怖を覚えたことはないだろうか。
そう言う夜には吸血鬼ノスフェラトゥの影を思い出す。
疫病の恐怖を視覚化すれば吸血鬼になると言う。

「吸血鬼ノスフェラトゥ 恐怖の交響曲」 監督ムルナウ 1922年
吸血鬼ノス.jpg

ほとんどの人が見たくも考えたくもない避けたい内容と映像だが、人によっては抑圧していたものが出口を探すような感覚で、時折苦いものが食べたくなったり、髪の毛が逆立つような疑似体験をしたくなったりすることと同じように恐怖体験が必要とされるようだ。
人が抑圧しているものを見つけ出し文字化、視覚化などすると、映画の悪役ならまだしも、コミックや詩や小説などになると、作者本人と同一視されて作者を毛嫌いされることがしばしばある。
嫌悪する側にもその要素が自分の胸奥にあるので嫌悪できるのだから、他人事では済まされないと思うのだが、飽くまでも平凡な自分とは関係ないと言いはるのだ。
知らぬ存ぜぬの抑圧で生まれた化け物は、その人をのっとってしまうことがあるかもしれない。
常に顕在化させている方がまだましである。
しかし肉体の切断ものや時間をかけての肉体の引きずりものや、スプラッター映像にだけには慣れることがなく映画「ソウ」などは見ることができない。


隠していることや、抑圧しているものに、何かのはずみにさらに圧力がかかる。
いつしか耐えられなくなって、噴出してくるものが居場所を探す。
エイリアンやゾンビや吸血鬼、ユーホーの姿に仮の住まいを見つけ、その中に入り込み固定化しバランスをとる。
画面のゾンビが現実の世界に駆け込んで来るはずはないのに、思わずビクリと飛び上がり、背筋が凍る思いをする。
その場合は、人体の骨が共振を起こし、特に喉仏がいっしょに振動するようだ。
分かっているのに、わざわざそういう場(映画館・DVDを見る部屋)に行くと言うことは、内心欲しているからだろう。

ユングによれば、恐怖は、はるかな過去の無意識的記憶である。
ドラキュラはなぜこわいのか、この答えは簡単である。
もっとも本質的な恐怖は死の恐怖だからである。
ドラキュラもゾンビも人々を死の世界にひっぱり込む。
死を忌むべきもの、危険なものと見なした古代人にとって、これ以上の恐怖は考えられなかったであろう。
うごめくゾンビを客席で眺め、唸り声を聞くことで、もと人間だった彼らの過酷な運命の姿を嫌と言うほど見せつけられると憐憫の情さえわく。


渋澤龍彦は、「スクリーンの上に生きて動き出すようになった吸血鬼も、フランケンシュタインも、狼男も、ゴジラのごとき巨大な怪獣も、すべて非合理的であるがゆえに現実的な、古くてしかも新しい、人類の強迫観念の視覚化に他ならなかった」と述べている。

妖婆・死棺の呪い(魔女伝説・ヴィー) アレクサンドル・プトゥシコ監督  1967年 ソ連 
妖婆死間の呪い 大勢の妖怪.jpg

ゾンビ映画の父 ジョージ・A・ロメロ監督  映画「ゾンビ}
ゾンビ ジョージ・A・ロメロ.jpg
生存しているのに、もうすでに死んでいる形相をしたゾンビたちであふれかえっているショッピングセンター。
現実社会を生き抜くために、落ち込んだ時には、暗い曲をガンガン聴くとホッとするのと同様に、ゾンビから目をそむけず最後まで見る事を引き受けなければならないだろう。

現実の社会の疑似戦争の中の一員として生き抜こうとする時、とんでもない悪臭に耐え、焼け焦げてしまいそうな皮膚を持ちこたえさせるためには柔軟な押し返す力が必要となる。
電車の飛び込み事故や車の事故に出くわした時には嫌がらず、ちゃんとした対応ができるようになりたい。

昔の僧侶は、女人の死体からウジが湧き、赤黒く膨れた腹からガスが噴き出し、髪の付着した白骨に変化し続ける姿を、何日も見続け、世のはかなさや残酷さを実感する修行をした。
女人へのいたずらな思い込みや執着を断ち、過酷な死と生の現実をはっきりと腹に受け止め、さばさばと生きていこうとする。
体験した後と前では何が違ってくるのだろうか。


ハイチ(中米)で発生したブゥードゥー教の呪術師はおとなしいゾンビを作った。
その昔、西アフリカ人奴隷を農園で飼い殺しにするため、傷口にゾンビパウダーを塗り、仮死状態にした。
ゾンビパウダーには、テトロドトキシン(ふぐ毒)が含まれ、目覚めた時には自発性のないゾンビとなっていて、奴隷として農園で働かされた。


昨今、人間は自らの肉体に浄化し切れない毒を蓄積させている。
映画では、ここである日、突然変異が起こるのだが・・・・


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水野るり子詩集から詩  ・  詩誌「ラプンツェルのレシピ」の絵 [詩]

詩「手紙 ー クジラの耳かきに ー 」 水野るり子詩集より  
  新・日本現代詩文庫100  土曜美術社出版


ゆうべ私は、引き出しの奥で古い一枚の絵葉書    
を見つけました。 それは風に乗って届いた便り
でした。≪昨日、N町でクジラの耳かきを見つけ
ました≫と・・・あなたの歌うような文字で。


その夜、海は私の夢の中で暗く凪いでいました。
海沿いの道を、あなたはクジラの耳かき(それは
巨きなスプーンのようにも、空から落ちた三日月
のようにも見えましたが)を背に、南への途をう
ろうろと歩いています。空には月が無く、沖の方
を大きな耳をした一頭のクジラが通り抜けてい
きました。


クジラの耳の底で星の光が揺れていました。クジ
ラの鼓動とひとつになってチカチカと光っていま
した。あなたの吹くオカリナの一節も、死者のつ
ぶやきも、麦の穂のざわめきも何もかも、混沌の
まま、そこでひとつの星になって透き通っていま
した。それは≪宇宙の音≫でした。宇宙はクジラ
の耳の中で鳴り響く音楽でした。


クジラの耳かきとは何でしょうか。だれかの落
し物でしょうか、それとも忘れものでしょうか。
今ではもう何のために在ったのか、誰も知らな
い奇妙なものが、けれど何故か美しいものが、
世界のあちこちにあって・・あなたはいつもその近
くを歩いているのですね。私はいつか≪巨人の臼
歯≫を見たことがあります。それはただの土くれ
のようですが、ほんとうは、人類になりそこねて
太古に滅んだヒト属の痕跡なのでした。


この世界はかって途方もなくにぎやかな星だったの
でしょう。そしてあなたの背負っているクジラの
耳かきは、そんな遠い祭りの日のかたみなのでし
ょうか。今ではだれにも憶い出せない痕跡ばかり、
無数に散らばっている隠し絵のようなこの世界・・・
そのどこかを今日もあなたは一人で歩いています
か。いつか海辺の岩から古代の笛の音色を取り出
したあなたは・・・。



またお便りを下さい。年老いたクジラの聴く≪宇
宙の音≫の記憶を・・・隕石の遠いこだまを、マリン
スノウの無言のざわめきを、そしてひとすじの笛
の音色を・・・わたしにふたたび運んでくれる、そんなあ
なたの便りを。


オカリナ奏者○○○○○さんからの便り
クジラの髭でできた象牙色の耳かきを長崎のお土産に水野さんに差し上げところ、
詩の中に登場させて下さいました。恥ずかしい。もっと奥の原形モデルはスナフキ
ンかもしれません。
失われてしまったものや絶滅した動物、亡くなった人々との交流、無意識の中の
共通の世界をのぞかせてくれる昔話や童話の世界とこの世を自由に行き来する
水野さんは、ほんとうに現代の魔女です。
全作品が今回9月にいただいた水野るり子詩集(新・日本現代詩文庫100)に収
められているようです。

いただいた詩誌「ラプンツェルのレシピ」の表紙の相沢律子さんの絵が本当に気
に入っています。

ラプンツエルのレシピ.jpg
詩誌「ラプンツェルのレシピ」(Gの会) 絵 相沢律子  2009年3月
編集 水野るり子 坂多瑩子
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1) 風景   (8年ぶりの中学校同級会) [エッセイ風]

≪場所≫ 緑の生まれる所

遠くには緑したたり重なる山々、近くには木の葉や植物から織られたカーテンが忠実な遠近法で足下にまで広がっている。
空と移動する雲が川面に映り、藻と一緒に動いて去ってゆく姿は、生を受け死を迎える人生のようだ。


友人の御母堂が一人で暮らしている古家に泊めていただいたのだが、朝の畑の所々に靄(もや)がかかっていて、川から立ちのぼって来る霧の中に、フジバカマやまんじゅしゃげが人影のように立ち並んでいる。
仏間に飾られている写真たちが語りかけてくる暗がりで、もっと昔の人々が烏天狗と話している場所がある。
蛇のしっぽを掴んで振り回して皆に投げつけて遊んでいた公(きん)ちゃんは、いたずらの勢いが程よくなって、蛇や蛙ならぬビデオカメラをいじるようになり説得力のあるおじさんになっている。

おじさんおばさんたちが、遠足ツアー(ミステリーツアー?)を組んで、今はもう静かに休暇をとっている滝や池、山林の中の小道の木々たちの眠りを覚まして回る日も近いだろう。


クヌギ林のどんぐりの落ちる音が響くそこから「どんぐりと山猫」のお話が聞こえてくる。
青い岩石が苔に彩られながら流れを抱き、冴え冴えとした聖時間帯を作っている。
精神が枯渇すれば、この時間帯に浸かりに来て再生してもらう。
涙はここから流れ出し、全体が治癒して行くと言ってもよい。
湧水に金山から流れ出した金を含んだ石や水晶がみがかれ続けている。
山の存在から来る風圧に畏敬の念を抱いた人々は山にまつわる多くの昔話を作った。
まわりの山々から来る重力感覚の一部に溶け込んだ自分の存在感覚が、徐々に目覚める。


いくつかの峠の名前を聞くと、祖母が徒歩で越えてお嫁に来たO峠のことを、祖母の魂と重なりあいながら昨日のことのように思い出す。
今ではもうほとんどの人々が亡くなってしまっている父方の故郷なのだが、草の生えたやわらかい黒土を踏むと、彼らと交わした会話が甦って来る。
会話が終わると、わだかまりや讃美やなつかしさがうず巻いて消えてゆき、何ごともなかったように、ほとんど思い出せなくなる。
なつかしさの暴風雨圏内から抜け出せないで、後ろ髪を惹かれるままにしていると、故郷から遠ざかりちぎれて行く時に鈍痛を覚える。
惹き戻される。
里いものようにここに根づいていろと。
美しい楠の枝の震える木の葉の音楽を聴いていろと。
故郷の呼び声は危険だ。


すべて溶けて見分けがつかなくなって黄金の光に変わるとよい。


4年ぶりの同級会は(2)へ続く

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屋根裏部屋のマリアたち  [映画]

写真向かって左端が マリア
屋根裏ポスター1.jpg
屋根裏部屋のマリアたち  原題 LES FEMMES DU 6EME ETAGE(6階の女たち)
監督フィリップ・ル・ゲイ  フランス  日本公開2012年  106分
高級アパートの主人 ジャン=ルイ・ジュベール(ファブリス・ルキーニ)
スペイン人のメイド マリア(ナタリア・ベルべケ)

マリア.jpg


朝食に3分30秒ゆでた半熟玉子しか食べないこだわりを持つ中年男がいて、家の新しいスペイン人のメイドは1回目からみごとにそれをこなすのである。
ジャン=ルイとメイドのマリアの恋の始まりはそこからだった気がする。
機敏で完璧に仕事をこなし、機知に富んでいるメイドのマリアは、奥様にも気に入られ、シャワーの使用を許可される。
ある日、マリアは浴室でたまたま仕事から早く帰宅した主人のジャン=ルイに、愁いをまとった美しく輝く裸体を見られてしまう。
ジャン=ルイは証券会社を経営、男の子2人は寄宿学校に入れ、高級アパートに妻と2人で住んでいるお金持ちだ。



屋根裏5人の女性.jpg
マリアを含むスペイン人のメイドたちは6人で6階の屋根裏部屋に住み、そこから近辺のアパートに通っていた。
皆はマリアを恋するジャン=ルイのおかげでトイレが崩れた時も、家を出なければならなくなった仲間がいた時も何かにつけて彼の助力を得ることが出来た。


フランス人は他人の恋には口を出さず、自由恋愛を謳歌しているように見える。
飽くまでも私の感想だが、メイドや職人の男性、親戚や知人を家に入れると、すぐにも恋が始まり手がつけられなくなるところが落ち着かない。
こんな場面がづーっと続くなら居眠りするか外に出るかしたかもしれない。
なぜこの映画を見に行ったのかと言うと、数々の困難に出会っているにもかかわらず、メイド仲間の女性たちにパンチがあり、助け合いながら楽しそうだったからだ。




==========以下内容に触れています========


屋根裏ピクニック.jpg
1960年代のフランスには、スペインのフランコ政権から逃れてきた移民たちが大勢いた。
マリアたちは休日にはカトリック教会に通い、アパートの6階でパエリアを作り、皆でスペインの踊りを踊る。
仲間がいると言うことは活力を共有できる場をつくれると言うことだ。
彼女たちはどんなに意見が違っていても、同国人としていっしょにピクニックに行き、パーテイを開いて歌い踊り、相談事をしあい、励まし合ってお互いを見守りあっている。


ジャン=ルイは仕事相手のマダムと浮気をしたと勘違いされて妻に追い出された結果、メイドたちと同じ6階の1部屋で自由を満喫しながら暮らし始めた。
人生初めての自由だとのたまっている。


マリアとジャン=ルイはある夜、御多分にもれずよい仲になった。
マリヤには生まれてすぐに里子に出された男の子がいたので、消息が分かり次第ジャン=ルイには黙ってスペインに帰ってしまった。
はしょってしまうが、ジャン=ルイの妻は画家と結婚、3年後にジャン=ルイはスペインにマリアを訪ねる。

スペインのマリア.jpg
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「デンジャラス・ラン」  信じられるものを見つけた2人 [映画]

超デンジャラス.jpg
監督 ダニエル・エスピノーサ 2012年 アメリカ 115分
原題 「Safe House」 (隠れ家)


予告編でエージェント(スパイ・秘密諜報員)として、偶然に出会った新米CIA(隠れ家の番人)の職員と共に、32時間も逃げ回る魅力的な表情のデンゼル・ワシントンに魅かれたので足を運んでみた。
悪役として裏切りを働くとしても、デンゼル・ワシントンの持つ雰囲気には、人生360度の常識を踏まえた上で、尚且つ彼特有な何か仕方のないの重要な原因から来る理由がありそうに思えてしまうのだ。


元CIAの秘密諜報員のトビン・フロスト(デンゼル・ワシントン)が、南アフリカ(ケープタウン)にあるCIA(アメリカ中央情報局)のSafe House(隠れ家)に護送されてくる。
どうしたわけかトビン・フロストは、アメリカの国家機密を売る危険人物として世界の36カ国に指名手配されている。
僻地のSafe House(隠れ家)には、新米のCIAの管理人マット(ライアン・レイノルズ)がいて、何事も起こらない毎日を送っていたが、元CIAの秘密諜報員のトビン・フロストが到着した途端に隠れ家は何者かに襲撃され、2人はいっしょに逃亡する羽目になってしまう。
いまだ嘗(かつ)てお目にかかったことのないようなものすごいカーアクションの末、元CIAの秘密諜報員のトビン・フロストは1人で逃走し、新米のマットまで追われる身になってしまう。
デンジャラスラン男2人.jpg


~~~~~~以下内容に触れています~~~~~~




元CIAの秘密諜報員のトビン・フロストは、CIAの窓際族(汚職職員)に不利な汚職情報のファイルを体内に埋め込み逃走している。
汚職がばれたら大変なことになるCIA副長官やその部下たちが差し向けた追手にによって、ひそかにトビン・フロストが夜中に訪ねた仲間やその家族は、家の中で銃撃され友人も妻も容赦なく殺される。

デンジャラスラン2人女.jpg
汚職職員によって、汚職に関係していないCIAの仲間の女性も犯人を追いつめた農場でいきなり、仲間だと思っていた職員からピストルで撃たれて殺される。


トビン・フロストにまさかのことが起こって、農場での銃撃戦で命を落とすことになるが、CIAの浄化を信頼のおける新米のマットに託す。
トビン・フロストは、ポスターでは常に緊張した恐い顔をしているが、映画のシーンでは温かなまなざしをしており、何処を見ているのか、何を考えているのかわからない表情をしている。
天才的な策士であり、14もの国籍を使い分け、会話では人を惹き付けてやまずに従わせてしまうトビン・フロストがあっけなく死んでしまい残念だった。

CIAから、トビン・フロストを追いつめ殺すことが出来たと思いこまれてしまったたマットは、今回の事件の手柄によりCIA職員に昇格した。
しかしマットがCIAの汚職情報のファイルの内容を知っていることはだれも知らない。
CIA副長官に挨拶に訪れた時に、内部の者はごたごたを外に漏らさないものだと言われ、それとなく余計な事を言うなと釘をさされる。


組織は内部告発によらないと汚職などはおもてに出ないと言われているが、マットは汚職情報をインターネットやその他で全世界に向けて暴露する。


★鍛えられた肉体と孤独に耐えられる精神、とっさの時の素早い行動力を持っている秘密諜報部員は、1日~2日全く食事を摂らなくてもやって行けるらしい。
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「最強の2人」 [映画]

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最強の2人  監督 エリック・トレダノ&オリヴィエ・ナカシュ
制作2011年 日本公開2012年  フランス 113分
向かって左 フィリップ(フランソワ・クリュゼ)
右 ドリス(オマール・シー  テレビ界のコメディアン)


写真上左 フィリップの言葉  「彼だけは私を対等にあつかう」


刑務所を出たばかりのスラム出身の失業中の黒人青年ドリスが、パリの大富豪で事故で首から下が麻痺したフィリップの介護人の面接を受けるために、豪邸にやってくる。

介護の資格も体験もないドリスは不合格のハンコさえもらえれば、失業保険の継続が出来るのである。
ドリスは、障害者を思いやって勉強し、息のつまりそうな介護をするのではなく、タブーになっている言葉さえ平気でどんどん使ってしまって、かえって気難しいフィリップからユーモアを引き出し、笑わせてしまうのだった。
黒人のドリスの根っからの明るいエネルギーの気迫に応じることが出来る教養と気品を備えたフィリップ。
2人は相性が良かったのだろう。
日本だとこうはいかない。
介護人と介護される人の関係はまだいい。
友人関係だと思いやりが仇(あだ)となったり、「対等」と言うことのはき違えで、とんでもなく苦しむ場合がある。



~~~~~以下内容にふれています~~~~~



フィリップは孤独のため夜中に呼吸困難になる発作を起こすが、ドリスが、息をしやすい戸外に車で連れ出すとだんだんおさまって来るのだった。
車椅子は荷台に乗せることになっているのだが、ドリスはそんなことしたら馬(家畜)見たいだと言ってフィリップを車椅子からはずして助手席に座らせる。

シューベルトのアベマリアを聞きながら、フィリップは毎朝手足の屈伸をさせる介護を受けている。
この曲は全部屋に聞こえるようになっている。
ドリスはお構いなしに悪気のかけらもなく、おどけて障害を持っている人の真似をしたりする。

最強の2人 音楽.jpg
フィリップの誕生日、ドリスはクラシック音楽を聴き、「だめだ」とだめだしをした後、曲名「ブギー・ワンダランド」(アース・ウインド&ファィアー)でダンスを踊り、周りのみんなも巻き込まれて踊りはじめる。
心の底からほんとうに踊りだしたくなるいきいきした陽気な曲だ。
クラシックがだめだと言うのではなく、ドリスにとっては、ソウル系は心を捉えて離さないスッテプの踏める熱い曲なのだ。
ヴィヴァルディの四季(夏・春)、バッハの曲やヘンデル、ショパンのノクターン、モーツアルトの魔笛「おいらは鳥さし」、リムスキー・コルサコフの「熊蜂の飛行」他の曲が演奏されるが、ドリスの好きなソウルミュージック系の曲も流され、いきいきと皆で踊る所が楽しいのだった。
オペラの登場人物(ウエーバーの魔弾の射手?)が、全身木の葉だらけの木の精?になって登場した時、笑いが止まらなくなったドリスの笑いが伝わり、劇場にいる皆もお腹を震わせた。
自分にとって可笑しいものは可笑しいと言って笑い、現代美術の絵画に「価値あるの?」と言って自分も描けると言って描き始めるドリス。


左下 介護人兼秘書もこなす中年女性が、きさくでおしゃれで、ものおじしなくてよかった。
君はどう思う?と意見を求められ、きちんと答えられる場を共有出来るなんてうらやましい。
イヴォンヌ役(アンヌ・ル・ニ)
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最強の2人笑顔大.jpg

映画の初め、フィリップとドリスの乗った車が、警官たちをまいて暴走する時の曲「セプテンバー」(アース・ウインド&ファィアー)も好評だった。
フィリップはパラグライダーの事故で頸椎損傷になっているにもかかわらず、ふたたびドリスと共にパラグライダーに興じる所がすごい。
ドリスの弟が問題を起こしドリスを訪ずねて来たことがきっかけとなって、介護の仕事からしばらく遠ざかるが、2人の友情は続く。
ドリスはフィリップの文通相手の女性とのデートのおぜん立てもする。
最強の2人にはモデルがおり、2人とも実在の人物。
現在は、フィリップもドリスも家庭を持って暮らしている。

★フィリップ(1951~)が2001年に本を書き、テレビで紹介され、ドキュメンタリー番組が作られ、それを見た監督により映画製作の運びとなっている。

右下の帽子をかぶっているのが実在のフィリップ
左 アルジェリア出身の男性 当時21歳 フィリップを介護して10年間共に暮らした。
ドリス役のオマール・シ―もアルジェリアの青年も移民2世
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「交渉人」 ウサギ・レイコ 連続ドラマ  2010年映画化 [テレビ ドラマ他]

交渉人 宇佐木玲子(米倉涼子)
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特殊犯捜査係(通称SIT)の5係(交渉斑)に所属している宇佐木玲子(米倉涼子)は、ウサギと呼ばれている。
トレーニングで筋肉質な体格を維持させ、短いストレートヘアー、シャープな顔立ちをしている。
役職は主任、階級は警部補。31歳。
犯人と交渉するために現場に乗り込み、犯人との会話のやり取りで犯人の自暴自棄や暴走を治め、犯人の命と人質の命を守ることが任務だ。
人質も犯人も死なせず事件を解決させることが与えられた使命。

父を殺した宿敵の真里谷恭介からも、たった一人の理解者として受け入れられている。
真里谷から、「君は死にたがる人間を、理解できている」とまで言われる。

1対1で犯人と対峙するときは、相手の機嫌を損ねないように、慎重に言葉を選んで呼びかける。
なおかつ、自分に装着した無線マイクを通して、作戦指揮本部に、現場の状況が解かるように、犯人に悟られずに、しやべらなくてはならない。
今回は工場の事務所内で犯人と対峙している。


★印はウサギが犯人と会話しながら、指揮本部に伝えたいメッセージ。
♡ウサギ「怪我人はいないようね」 ★全員無事です
♡ウサギ「その銃、弾は何発入っている? 7発?」 ★人質は7人です
♡ウサギ「5発かな?」 ★内男5人、女2人
♡ウサギ「その拳銃、トカレフよね。歌舞伎町あたりで5万から6万てとこかな。トカレフには気をつけて安全装置がないから」 
★拳銃の入手ルートから犯人を割り出し、暴力団担当刑事に応援要請をたのんで欲しい。

〇2人のやり取りは、随時録音され、声紋照合にかけるために、対策本部へと送信されている。
〇マイクが拾う声の大きさや反響で両者の距離がおおよそ推察できる。

♡ウサギ「さっき2発撃ったんだっけ、ジャムらなかった?(からの薬きょうが飛びださず、次の弾が打てなくなること)」 
★会話が通じていると言うことは、犯人がガンマニアの可能性がある。銃器マニアの前歴者リストを調べてください。


交渉人 ポスター.jpg

<一例>
ウサギは犯人と会話しながらも、窓際に寄って指先でブラインドの隙間を開ける。
窓の外のハイバースコープが、室内の映像を捉え、モニターが犯人の姿を映し出す。
犯人の顔がファイル保存され、データは本庁に転送され身元照会にかけられ、犯歴を調べられる。
報告によって、刻々と状況が把握される。
立てこもり犯人に自殺願望があるのかないのかがわかってくる。
目的も、犯歴を調べるとわかる場合がある。
今回の犯人は、陸上自衛隊を懲戒免職させられている。
そのためか銃の扱いに慣れており、専門用語も理解できていた。
郵便局現金強奪事件で1億2千万円を奪っている疑いがあり、重要参考人として任意同行されている。
案の定、立てこもった工場内に現金入りのケースを隠していた。
仲間がいないとこのような行動は難しいとされ、ウサギの勘が当たって、人質の中に共犯者の女がいた。
ウサギの現場での鋭い体感や、学んだ知識や経験からくる、言動や勘が素晴らしい。


08年テレビ朝日連続ドラマ(8回)
09年再放送
脚本 寺田敏雄
ノベライズ  稲元おさむ


映画「交渉人」 2010年2月
監督 松田秀和 2時間3分
交渉人 映画2010.jpg


★最近見た映画 (まだ消化できていないので浮かび上がってこない)
「プロメテウス」 「アベンジャーズ」 「トータルリコール」 「プレイ獲物」 
「屋根裏部屋のマリアたち」 「画皮 あやかしの恋」
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