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詩「月の皿」(Lunatique) 二兎no7より 水野るり子 [詩]

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「月の皿」 水野るり子
  二兎7号《昼下がりのお客》より



手紙の封をして顔をあげると  そこは巻貝のようによ
じれた階段の途中だった 足もとから海の匂いが上って
くる 段々を降りていくと小さな扉があった のぞくと
色あせた本の山がくずれ落ちてくる 窓からさしこむ一
筋の月光のなかを埃が舞い 埃のひとつひとつが見知ら
ぬ城のように光っている


城は水に囲まれている 水の底に台所がかたむいている
包丁を研ぐ音が聞こえる 夜の料理人の刃先がするどく
光ってくる 調理台に横たえられているのは あれは・・・
魚だろうか それとも巨きな烏賊の一種だろうか・・・青と
灰色を巡る音階が 料理人の胸のなかを止むことなく流
ている 滅びた星々からの通信のように


どの皿にも神話が潜んでいる 一羽の鳥であれ 一匹の
魚であれ 一本の野の草であれ 料理人の研ぎ澄まされ
た刃先は 生きものたちが隠し持つ魂のものがたりを引
き出す(肉の一切れからは 引かれてゆく母牛を追って
哭いた幼い日の一刻を・・)(セリ属の一茎からは 野の
せせらぎに初めて触れた刹那のあの身ぶるいを・・)それ
らはどれも神の唄う ただ一回きりのものがたりだった


漂流する月の皿・・そのまわりに親族たちは集い 肉や魚
や野菜の幾片かをひとりひとりの皿に取り分ける(祖父
母たちや父母に倣って この私もまた・・)そして皿の上
でオリーブや調味料の匂いにまみれたもうひとつの神話
に浸る 食卓にのこされたのは鳥たちの脚だけだ その
魂はすでに声もなくどこかへ飛び去っている 宛名のな
い手紙となって

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<思いつくままの感想>
宇宙をさまよう種子をのせたシュールな皿  現実世界とつなっがっているけれど片端から消えてゆく影の世界  空いちめんの巨大な神々の食卓  どこかでつなっがっている二つのもの(一方はメルヘンの世界の蟻の巣をたどって、もう一方は消えた星々を追って)捕まえたと思ったら消えてしまう人間共通の原型   キリコの輪を回す少女の時間と足音  影の影に発生する渦  ちらばっってゆく針状の音





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柴犬カンチの足跡日記
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