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(2)底にあるものは異形や老いへの恐怖  楳図かずお原作  映画「おろち」 監督・鶴田法男 [映画(原作コミック)]

映画「おろち}  監督 鶴田法男 107分 脚本
原作(コミック)楳図かずお 小学館

谷村美月(おろち・佳子の2役)
木村桂乃(母の門前葵・娘の門前一草の2役)
中越典子(門前理沙)
おろち ポスター.jpg


映画「おろち」(2) 前回(1)からの続き
たとえれば戦士の休日のような朝、小鳥たちのつややかな高音のさえずりに交じって、とぼけたカラスの声が聞こえる。
カラスの声を目指してゆくと地面には人や獣の死体がある。
容姿の崩れが29歳すぎると始まる受難の門前家の姉妹、姉の一草(かずさ)と妹の理沙は、毎朝鏡を見ながらおびえ、鳥たちの声を死刑の宣告のように聞いていたに違いない。


母のいまわのきわの遺言を聞いたのは、妹の理沙だった。
理沙の説明によると、母の遺言では姉の一草だけが、29歳を過ぎると容姿の崩壊が起こる門前家の血を受け継いでおり、妹の理沙はもらい子だった。
この地点で優しいものの言い方をする理沙を疑う者は一人もいなかった。



★★★★以後ネタばれ★★★★

おろち 2人の戦い乃様.jpg

それを聞いた姉の一草(かずさ)は自分の運命を呪い、妹の理沙を妬んで、理沙が運んできたコップの水を理沙の頭にあびせ、髪をつかんで引きずりまわし、殴るけるなどの乱暴を働いた。
家具にもめちゃくちゃに当たり散らし、自分の容姿が崩れることしにしか関心がなく恐怖におののいている。
家政婦のよし子(谷村美月)と、門前家を見守るおろち(谷村美月)の2役の同時間上の登場で、観客は先の予測がつかず、展開への強い興味からイスから携帯などの用事で立てなくなる。
予定調和とは程遠い結果が現れることに期待し、それが充分に報われるであろうことをひそかに予想しているのだ。


よし子の血と姉の血を入れ替えれば姉が助かると、異様な個性を持った執事の西条(嶋田久作)に聞き、やさしく装われた妹の目に妖しく残忍なベールがかかる。
姉も妹も執事も獲物を狙う蛇になるのだった。。
しかしよし子が姉の一草と同じ血液型だと言うのは、よし子がお屋敷で働きたかったためについた嘘だった。
血液型が合わなかった姉は輸血の途中で苦しみもがくが、かろうじて助かる。
よし子は姉の一草に突き飛ばされて階段から落ちて死ぬ。


姉の狂気はすさまじくなり、誕生日が来る前に、自分で額や頬に焼け火箸を押しあて、自ら醜い顏になるのだった。


思慮深く優しそうな妹の笑いが、勝利を得た者の高笑いにだんだんと変化してゆく。
妹の理沙がみんなにかくしていた姉妹にかかわる重大な秘密がそろそろわかってくる。
本当は妹の理沙のほうが、門前家の血を受け継ぎ、29歳で顔の形が崩壊してゆくのだった。
姉の一草は貰われてきた子供で、門前家の血は受け継いでおらず、何事も起こらないのだった。
顔に焼け火箸をあててしまった姉の一草は見るも哀れに絶叫する。


お屋敷の暗がりで、29歳を過ぎ顔が崩壊した妹の理沙と、焼け火箸で顔が醜くなった姉の一草が老婆のようにうずくまって暮らしている。
おろちは静かに見るべきものを見て西洋館を立ち去ってゆく。


★なぜ、このようなお話が必要なのか。誰にとって必要なのか。
葵や一草や理沙を哀れに思いつつ、そら見たことかと溜飲を下げるのは女性たちなのだろうか?
いつも主役を取る美しいけれど傲慢な女優(葵)や、その美貌を受け継いだ何不自由のないわがままな娘が、最高の痛々しい宿命を背負っていることが分かって初めて、人々は彼女たちを許せるのだろうか。


コミック「おろち」4巻(小学館)より
窓辺のカーテンに隠れるおろち  画・楳図かずお
映画「おろち」は、コミック1巻の「姉妹」と4巻の「血」をミックスさせて作られている。
コミックおろち 4巻2.jpg
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(1)美しい姉妹のだましあい 楳図かずお原作  映画「おろち」 監督・鶴田法男  [映画(原作コミック)]

おろち ポスター.jpg
監督 鶴田法男  脚本 高橋洋 2008年 107分
原作コミック  楳図かずお1巻~4巻(小学館)
谷村美月(おろち・佳子)
木村桂乃(母の門前葵・娘の門前一草の2役)
中越典子(門前理沙)

「おろち」と言うのは、大蛇のことで超能力を持った美少女の名前。
おどろおどろしい名前は、美少女にはふさわしくないが、並々ならぬ暗黒の中でのたうちまわるさまを見れば、暗い底力を持った瞬発力のある大蛇とはよく言ったものだ。
おろちは、人間になって100年間不老不死の肉体を維持することができるが、その後疲労すれば回復させるためにしばらくの間(20年間)眠りにつく。

美少女おろちは、草木の黒い影が揺れるあらしの夜の風雨を避けるために、西洋館の門前家に足を踏み入れる。衣装は赤い色。

おろち 谷村美月
おろち (2)小.jpg

そこでは残酷な運命を背負わされた2人の姉妹、姉の一草(かずさ 木村桂乃)と、理沙(中越典子)、元医者の召使い西条(嶋田久作 帝都物語)、3階に住む病に伏した母親(葵)が暮らしている。
門前家の女に背負わされた運命とはいかなるものか。


おろちは超能力を駆使し、深い関わりをもって人の惨劇に介入し、助力を惜しまず、ことがおさまると立ち去ってゆく。
人の不幸を黙って立って見続けるだけの傍観者の群れを描いた映画「ギヤザリング」のような意味では、悪魔的に不気味ではない。がしかし。
楳図作品にはおなじみの、プラズマ渦巻く昼なお暗き空が、物語の行く手を暗示している。


美少女おろちは、嵐の夜、門前家(もんぜんけ)にたどり着き、人に見られずに、部屋の暗がりや、カーテンのうしろから、門前家の女優の母親や仲のよい少女姉妹を眺めつづける。
勘が鋭いおろちが滞在すると言うことは、足を止める理由があるわけだが、門前家には、1歳違いの少女姉妹、姉の一草(かずさ)と妹の理沙がいる。
母親は有名女優で、主演の映画を撮らせるような美貌の持ち主であるが、いつも何かに脅えていて、周囲の者に言いがかりをつけ絡んでは、毒ずいて突き放すようなヒステリックなものの言い方をする。


★★★★★★★★
内容が少し明かされます(ネタばれ)

門前家の秘密とは、女が29歳を過ぎると美貌が崩れ始め化け物のような顔になってゆくことだ。
額の隅に粒状のみにくいできものが現れ、いずれ全身に増殖してゆく。
今は指にも同じものが現れている。
門前家の女性には、生やさしい慰めや説教はかえって不安をあおりたてることになる。
おしきせの理屈など一切通じず、きれいごとは一笑にふされる。

29歳の誕生日に、できものの兆候に気付いた女優の葵は、酒をあおり、狂ったように車を運転し、お屋敷に続く道を暴走する。
美少女おろちは、車の横に飛び乗り、車をとめようとするが、2人とも崖下に転落してしまう。
腕を怪我し血だらけになったおろちは、急に眠気を催し、自分の肉体を野良犬などから守るために、安全な場所を捜している途中、洞窟に落ち込む。おろちが眠っている間に20年の歳月が流れる。


桂子(よしこ)は、酒場を流して歩く夫婦の血のつながらない天涯孤独な娘として、ギターの伴奏で「新宿烏」(しんじゅくがらす・楳図かずお作詞)を歌い歩く毎日を送っている。
女優の谷村美月が桂子とおろちの2役をやっている。
おばさんは日頃の不幸を、暴言を吐き、佳子(よしこ)の顔を殴りつけることで解消している。
佳子(よしこ)は、美しく成長した門前家の妹の理沙に300万円で買い取られ、門前家の家政婦として働くようになる。
何のために理沙が、桂子を家政婦にするのか、その恐ろしい魂胆が分かって来ると、じわじわと怖くなる。
佳子は姉妹に殺されることになるのだが・・・次回おろち(2)でその理由を述べる。
成長した姉妹の執念と裏切りはお互いに執拗であり、すさまじいバトルが繰り広げられる。


美少女おろちは、門前家に忍び寄り、佳子を陰で見守っている。
1歳違いの姉妹の一草と理沙は27歳と28歳になっていて、容姿が化け物のように崩れる29歳は目の前にきている。
門前家の玄関から中に入ると中央に2階に上がる美しい階段があり、絨毯が敷かれ、その上に母親と子供が戯れる絵画がかけられている。
美少女おろちは、絵画の母親の目に自分の目を植え付け、玄関の部屋で繰り広げられる光景を見ることができるようにする。
絵画の女性の目だけが、きょろきょろと動くさまは、お化け屋敷の見世物を思わせる。
おろちが颯爽と超能力を発揮する前後に、どこからか吹いてくる風に髪があおられて美しい。
母の葵が亡くなる前に、妹の理沙に告げたことがある。

姉 一草 (木村桂乃)
おろち 姉.png

妹 理沙(中越典子)
おろち 妹.png

そのことによって、姉妹は2人とも生き地獄を味わうことになるのだが・・・・・
詳しくは~おろち(2)へ続く~

楳図かずおのコミック「おろち」は1巻~4巻(小学館)まであり内容は8話。
コミックでは、顔面や体中にできものができるのは、18歳を過ぎてからになっている。
映画の29歳の方が18歳よりも、あでやかになっていて、美貌が崩れていくことに対しての抵抗もすさまじい。
映画「おろち」は、その中の1巻の「姉妹」と4巻の「血」をミックスさせて作られ、脚本は、「女優霊」「リング」などを制作した高橋洋監督が手掛けている。

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映画「赤んぼ少女」 監督・山口雄大  原作コミック・楳図かずお [映画(原作コミック)]

赤んぼう少女.jpg
映画「赤んぼ少女」監督・山口雄大  2008年 

嵐の夜の稲光、幽霊屋敷と呼ばれている瀟洒な西洋館。
レースのカーテンと房を下げた風格のある分厚いカーテン、彫像のある廊下、木々の葉が影を落とし、草の胞子が飛び交う暗い庭、不気味な絵、草に覆われた古井戸、得体のしれない召使い、と言うようにホラーになくてはならない道具立てがそろっている。
原作者の楳図かずおは、とことん悲しいまでに悪意を描いて見せる。
嫌と言うほど執拗に、憎しみや怨念や狂気を描く漫画家も珍しいが、読まずにはいられない吸引力がある。 
バランスを取るために、時には角度を変えて、世の中に隠されているありがたくない感情の痛すぎる出所を、確認しょう。
悲しいほどに蠢く(うごめく)邪悪な感情に翻弄され、広がってゆく波紋。


映画「赤んぼ少女」
赤んぼのままで、成長が止まっているタマミは15歳。
タマミには、赤んぼの小さな肉体と、異様に伸びた茶色い右腕しかなく、しかも指は節くれだって変形していて、爪も悪魔の爪のようにとがっている。
顔には深いしわが刻まれ、歯はぎざぎざで醜い。
タマミには、天井裏をはいずりまわり、壁をリスのようにピョンピョン飛び、西洋館周辺の執拗な探索をすることによって、15年もの間鍛えられた怪力が備わっている。
黒くとがった歯の生えた口を開けて泣きつづけ、気に入らない者には、「ビヤー ビヤー ビヤー」とひしゃげた高音を口内で発して、相手に飛びつきざま噛みつく。
西洋館を訪れた者が井戸をのぞくと、怪力で引っ張り込み、異常に強い指の力で首を絞めて殺す。
タマミは、ほとばしるような邪悪な憎しみを、他の人間に正直に向ける以外に、人と関わる方法を知らない。

南条家には15歳の2人の姉妹がいる。
醜悪で残忍な赤んぼ少女タマミと、美形の少女葉子。
奇形に生まれたタマミは、病院で死んだと思われていた。
しかし母親が、父親に内緒で、タマミを、仏像の裏の秘密の隠し部屋で育てていたのだ。
タマミの生存を知った父親は、タマミを鞄に詰め、川へ投げ込むが、タマミは鋭い爪で鞄を破って出てくる。

タマミは醜くく生れついた自分に納得することができず、葉子の美しさに嫉妬し、葉子を盗み見している。
葉子の口紅を、自分の魔物のような唇に塗りつけた後、おのれのあまりの醜さに怒り狂って鏡を割り、葉子の部屋を滅茶苦茶にする。
奇声を発しながら、美しいものや自分を受け入れない者を、父親であろうと、姉妹であろうと、殺そうとするタマミの怨念は悲しい。

燃えさかる西洋館の中へ、気のふれた母親に抱かれながら戻ってゆく醜いタマミ。
「オ・カ・ア・サ・ン・・・ゴ メ ン ナ サ イ」とつぶやき死んでいくのだった。
母に抱かれたタマミの骸(むくろ)が哀れ極まりない。
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